Paul Templeピサック救援活動ブログ(日本語版)

2011年2月27日日曜日

アンデスの春の訪れ

そういえば、Paul Templeさんのピサック救援基金の最後の日記を翻訳するのが、ペルー訪問の準備と重なっていたこともあり、忘れた宿題となっておりました。

昨日Paulさんから、素敵なニュースに満ちたお便りを頂きましたが、それでこの宿題を思い出してしまいました。

本「ピサック救援基金」はおかげさまで目標額に到達し、当初は食糧配給を重点的に行っていましたが、昨年の11月、つまり春の訪れとともに、ケンコー村の医療センターの建設、及び被災した方々の家屋の再建に充てられているとの事です。

(現在Paulさんご自身は、基金そのものの募集は行っていないものの、お志頂く場合は、それはこのような長期的な支援に充てさせて頂きますとのコメントを頂いております。)

では、3ヶ月も過ぎてからのご報告となりますが、ご関心を寄せてくださった方、どうぞ彼のレポートを感じ取ってみてください。

パチャママに感謝

陽一

Wednesday, November 17, 2010

ここインカの聖なる谷に美しい春の日が訪れた。季節特有の雨季も始まったようだ。光のシャワーと、その合い間を縫って土砂降りの雨模様へと変化する。この時期ならではの光景だ。すべては均衡を取り戻しつつある。


パタパタ耕作地帯は、見るも鮮やかな緑に包まれ、マイーズがぐんぐん成長している。山々も同様に、最近の雨への感謝の表現として、鮮やかな緑に輝いている。

この写真はカピラ(capila)という、ピサックのはずれにある教会から撮られた写真で、西の方角(ウルバンバ川下流方面)を撮影している。僕の家はこの写真で言うと、右側の方角にある。

この最近の春の雨の影響で、ウルバンバ側流域の村において、土石流、巨石、そして大木が根こそぎ下流の村に流されたという事象が、チコン氷河よりも上の村で発生した。被害は発生したものの、死傷者はゼロなのは幸いだった。。親しい友人は夜間に高地へ、子供たちと一緒に避難した。台所に巨木が落ちてきたそうだ。

氷河巨大な一部が崩壊して、湖に落下したことで発生した水位の急激な上昇によるものか、はたまた地方自治体の伐採活動によるものなのか、原因は不明だ。一部の人々は、雨季が開始する前としてはあまりよくない前兆だと話している。

(昨年大きな洪水の被害を受けた)タライ村では、激しい雹が降り昨年の洪水の悪夢を想起した村人は半パニック状態に陥ってしまったようだ。昨年発生した洪水の光景、コリコッチャ山からウィルカマユ川流域で発生した床上浸水の状況。この状況はあまりに鮮明のその光景を村人たちに想起させたのだと推測する。

大抵の人々はプエブロ(粘土作りの家)に戻ることができたが、ある村人は親戚の家などに身を寄せたりしている。また一部の人々は未だに避難用の小屋で仮住まいをしている人々もいる。

(私が理解している限りでは)洪水の影響を受けた多くの人々は、政府から直接的な支援などを受けてはいない。

政府は名目上のわずかなキャッシュを提供したが、これで家々を再建するにはあまりにも不十分と言わざるを得ない。タライ村ではその資金援助すら行われず、これでは状況は変わらず、事態が改善される兆しは無い。

このような事象が発生したにも関わらず、農村の人々からはこの雨季を「恵みの雨」として歓迎しているようだ。収穫量と質は低下しているにも関わらず、収穫期の訪れとともに、食糧配給支援の要請は止んでいる。

比較的高山地域のケンコー(Q'uenko)村の医療施設建設のための、建設資材提供に現在、支援をシフトしているところだ。最近では「カリッゾ」と呼ばれる(竹のような)屋根の枠組みに、「テジャ」と呼ばれる焼き物でできた瓦を敷き詰めていく工法だ。この構造は「フィナ」と呼ばれる共同体の労働者たち(集団労働チームのようなもの)によって組織されており、本格的な雨季が訪れる前に、今週屋根吹き作業を完了する見通しだ。



屋根が完成すると、今度は内装を施していく。床、窓、ドアなど。そして水道管の敷設と、電気工事、しっくい塗り、ガラスのはめ込み作業などに移る。2011年の3月にはすべての作業が完了する見通しだ。

ケンコー村のじゃがいも不作の顕著な影響としては、殆どの世帯が赤字収入であるということ。従って彼らの殆どは一時的にプエブロから実を引いて、現金収入に結びつく労働に従事している。

この忍耐強い人々は不平不満も述べずに、どんな仕事でも喜んで引き受ける。けれでも残された家族の思いを察する術も無い。




この数ヶ月は本当に多忙な日々が続いている。政府はピサックとクスコの間の痛んだ道を修復しており、(洪水の原因となった)運河の清掃、修復に余念が無い。ピサックにかかる橋も橋脚にあたる部分に補強工事が施されている。

僕個人にとっても、この「運河の清掃、修復作業」は必須の課題であることは間違いない。軒先の排水路と、ガーデン棚の補修工事は、低い場所のものと比べて倍のサイズを必要とする。



ああ、大地の女神、パチャママのなんと慈愛溢れることよ。果実、そして花々が同じ桃の木でほぼ同時に実りと開花を迎えている。そして大きく実ったばかりのブロッコリ、昨年からのケールなどを僕の庭で収穫することができている。

昨年咲き乱れていたバラの花々が、同じ場所で今年も咲き乱れている。昨年植えたラッパスイセンの球根が芽を出し、ひまわりの花も芽を出している。

ここプルマクルコでは標高約3000mくらいある。マイーズ(とうもろこし)とじゃがいもが主な作物だ。成長も早くて、実験的にキヌア、カニファ、そしてマカを栽培しているのだけれども、ケンコー村は標高が4600mもあるので、これらのスーパーフードはまだ芽を出してくれていない。

アンデスの春は年間を通しても本当に美しい季節だ。差し迫った「備え」としては、この雨季に対してできる限りの対策を講じておくこと。地域全体でも十分に事前の注意がなされており、昨年よりは確実に備えができている状態だ。けれども第三世界特有のインフラの脆弱性を孕んだままではあるが。

政府は衛星画像を経由して、洗練されたコンピューターモデリングで、12月の雨量を予測しようとしている。農村の人々、カンペシーノたちは伝来の言い伝えより、アプ・パチャトゥサン(Apu Pacha Tusan)の頂上に雪が降るころには、雨季が始まるということを知っているのだ。




頂に雪が降るアプ・パチャトゥサン

バラリオと外で雑談をしながら、「ねえ、バラリオ、君はどう思うかい?12月の雨量はどんな感じになるのかな?」

彼はにやっとして、(僕は彼をからかっているのかな?)目をきょろきょろさせながら、こう答えてくれた:

「あ、みんなたくさんガリナス(鶏)みたいにお喋りしすぎるのさ。だから間違える。天気のこと(将来起きること)なんかあんまり詮索しないほうがいいのさ。もっと神さまを信頼することだね。」

さすが!それでこそ僕の見込んだ男というものだ!

ウルピヤイ・サンクルヤイ(Urpiyay Sunkulyay) ...
「僕のハートにいる小さな鳥から、感謝を込めて」

Paul Temple

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